高齢者の不慮の事故による3分の1は、家庭内での事故。
交通事故よりも多い発生数です。
小さな段差にもつまづくことが多くなるので、家の中の様々な障壁(バリア)を取り除くバリアフリー化へ。
もちろん、段差をなくすなどした高齢者にやさしい家は、小さな子供にも大人にもやさしいはずです。
介護で気をつけたいこと
高齢や障害で介助を必要とする場合、その程度や内容など個々の状況によって、住まいの設計も変わってきます。
介護を行う場合、バリアフリーや手すり、スロープなどの設備のことを考える前にまず次のことを念頭に置いておきましょう。
- 価値観やライフスタイルを考慮して、生活の自立性を援助する
- 安全な生活空間をつくり、予防に重点を置いた介護を心がける
- かかりつけの医師やホームヘルパーなどと連携して支援する
生活時間の長い寝室は、安全&快適に
体の自由がきかなくなると、寝室での生活時間が多くなります。
非常時の避難経路をはじめ、排泄場所、採光、風通しなどを検討して、安全で快適な生活が送れるようにしましょう。
たとえば、寝室を玄関と同じ階にして、トイレ、洗面室、浴室と隣接させると動きやすいもの。
現在は必要でないなら、将来のために1畳分ほどの収納スペースを設けておくと、後からトイレへの改装が簡単にできます。
寝具は、ベットが便利です。体の機能低下が進行した場合は、昇降機能の付いたベッドを検討しましょう。
床は、廊下と段差をつけないのはもちろん、材質は適度に柔らかで足ざわりがよくて滑らず、掃除しやすいコルク系、木質系床材などに。部分的に張替えができるタイルカーペットも便利です。
車いすを使う場合は、キズが目立たない色や模様を選びます。
壁の仕上げは、ざらざらしたものは避けましょう。
玄関
玄関の開口幅は広く取り、ドアの取っ手は大きくて操作が簡単なものにします。
上がり口に手すりを設置すると共に、靴を履いたり脱いだりする時に座れるベンチを設けるとより安全です。
上がり框の手前に一段低い式台を備えたり、床仕上げも滑りにくい床材を選ぶようにしましょう。
トイレ
出入り口は引き戸にし、介助者も同時に入れるスペースを確保。
足腰に負担の少ない洋式にして、L型手すりを設けると共に、水を流す機具やペーパーホルダーの位置にも配慮を。
緊急通報装置も設置しておくとよいでしょう。
浴室
開口部を広く取り、扉のガラスは割れにくい素材を選択。
浴槽のまたぎ越しは40センチが一般的です。床暖房、換気暖房乾燥機なども設けましょう。
バリアフリー仕様の基本的な要件として、浴室の広さは有効面積2m2以上です。
段差をなくす
転倒やつまづきを防いだり、車いすでスムーズに移動できるよう、床の段差はできる限りなくします。
新築時なら段差のない設計に。ほかの場合、床をかさ上げして同じ高さにしたり、板をつけてなだらかなスロープにしましょう。
手すりをつける
玄関、廊下、階段、浴室、脱衣室など、立ち座りや上り下りしたり、片足立ちになる場所には、手すりを設けます。
横手すりは、水平方向への移動を助けるのに有効。
縦手すりは、立ち止まってする動作や、立ったり座ったりする場所に取り付けます。
L字型手すりは、玄関、浴室、トイレなど水平と垂直の両方の移動をする場合に便利です。
なお、廊下の手すりは、利き手側に付け、途中で途切れないこと。
手すりの端に衣服の袖口が引っ掛からない工夫も大切です。
手すりの位置や高さは、使う人の身体状況に合わせましょう。
通路や出入り口の幅を広く
手すりを取り付けたり、車いすに対応するためには、安全に移動できるだけの幅が必要。
車いすを使う場合、廊下の幅は80~120センチは取っておきましょう。
また階段は、勾配を緩やかにして、踏み板の奥行きも十分に。直線の階段ではなく、踊り場を設けると、万一転落した場合も下まで落ちずに済むことが多いでしょう。
使いやすい設備を
視力や握力の低下、手指がスムーズに動かせないなど身体状況に合わせて、設備も配慮します。
たとえば、水栓金具は操作しやすい形で、温度調整が安全にできるタイプを。
手をかざすと水が出て、離すと止まる自動水栓も便利。
また、押し引きしなくてもよい引き戸にすると、車いすでも開閉しやすく、大型のレバーハンドルならノブよりも力を必要としません。
スイッチについては、大型のものを、床から90~100センチの低めの位置に設置すると車いすでも使い勝手がよいでしょう。
アプローチはスロープ状に
道路から玄関までも出入りしやすいよう、スロープを設置します。
それが難しい場合は、テラス部分の利用も検討を。
プローチには手すりや足元灯を設けて、屋外灯を明るめにすれば、より安心です。ポーチは、雨の日も濡れないように大きめにしておきましょう。
最後に
バリアフリーと一言にいっても住宅の中で様々な箇所が障壁になっていることが分かります。
全ての個所を一気にリフォームするのは金銭的にも工期的にも難しい部分があるので、小さな手すりなどから徐々にはじめ本当に介護が必要になった時に生活しやすい環境をつくれるように準備を進めましょう。