アスベストは、日本語では石綿と呼ばれる天然の鉱物繊維です。
蛇紋石や角閃石が繊維状になったもので、直径は0.02〜0.35マイクロメートル。細いものは人の髪の毛の5000分の1ほどです。
熱や摩擦、酸、アルカリに強く、丈夫で変化しにくい上に費用も安かったため、建築材料や産業機械、化学設備に広く使われてきました。
種類は、蛇紋石系のクリソタイル(白石綿)と、角閃石系のクロシドライト(青石綿)、アモサイト(茶石綿)、アンソフィライト、トレモライト、アクチノライトです。
健康への影響
石綿の繊維は、WHOの報告で肺線維症(じん肺)と悪性中皮腫の原因になるとされています。
肺がんを起こす可能性も知られていて、喫煙との関係が深いこともわかっています。
悪性中皮腫は、肺を囲む胸膜、腹膜、心膜などにできる悪性の腫瘍で、進行が早く予後が悪い病気です。
症状が出るまでの時間は長く、資料によって数字に幅があります。
中皮腫の潜伏期間は、平均35年前後とする県の資料、平均約40年とする市の資料、平均43年とする産業保健の資料があります。
肺がんについても、15〜40年とする資料と、20〜40年とする資料があります。
いずれも、吸い込んでから数十年後に発症する点は一致しています。
現在も影響は続いています。過去に職場で石綿を吸い込んだことによる肺がんと中皮腫の労災保険給付は、毎年約1,000件の支給決定が続いています。
厚生労働省の人口動態統計では、1995年(平成7年)から2024年(令和6年)までの中皮腫による死亡者は、全国で34,559人です。
日本での規制
2006年(平成18年)9月1日から、労働安全衛生法に基づき、石綿と、石綿を重量の0.1%を超えて含む製剤その他の物の製造、輸入、譲渡、提供、使用が禁止されています。
厚生労働省のリーフレットは、上に挙げた石綿の各種類を示したうえで「全面禁止」としています。在庫品も、譲渡、提供、使用ができません。
解体・改修工事の前に必要なこと
建築物などの規模や金額にかかわらず、原則としてすべての解体、改造、改修工事で、元請業者や自主施工者が建材の石綿の有無を事前に調べなければなりません。
結果の報告も義務になっています。2022年(令和4年)4月からは、一定規模以上の解体等工事で、石綿含有建材の有無にかかわらず、事前調査の結果を都道府県知事などに報告する必要があります。
対象は、解体部分の床面積が80平方メートル以上の建築物の解体工事と、請負金額が税込100万円以上の建築物の改修工事です。
調査を行う人にも資格が求められます。建築物は2023年(令和5年)10月1日から、工作物は2026年(令和8年)1月1日から、有資格者による事前調査が義務です。
輸入品での確認事例
禁止後も、基準を超える製品が流通した例があります。
厚生労働省は2021年(令和3年)2月、輸入販売された珪藻土のバスマット、コースター、トレーで、基準を超える石綿の含有が複数確認されたとして、関係団体に確認を改めて依頼しました。在庫品や輸入品の点検も求めています。
石綿を吸い込んだ可能性があり、息切れ、胸の苦しさ、咳、胸痛などの症状がある場合は、専門医療機関の受診が案内されています。



